皇學館大学|教育学部
研究活動
 
熊野古道ウォーキングに要する身体運動量

 平成16年7月、古くから神々の住む聖地、死霊の集まる再生の地として崇められてきた熊野三山(熊野本宮大社,熊野速玉大社,熊野那智大社)に詣でるための道、熊野古道が世界遺産に登録されました。

 現在では、大きく六つのルート(紀伊路・大辺路・中辺路・小辺路・大峯道・伊勢路)に分けることが出来る熊野古道ですが、伊勢路は、伊勢国から南下して、紀伊国に東から入るルートで、庶民の信仰の道ともいえました。(写真)

 伊勢路が流行しはじめたのは、江戸時代からです。享保13年(1728)出版の「巡礼案内記」によれば、「西国巡礼の志ある人は、まず大神宮に参りて八鬼山を越すなり」と記され、巡礼者の多くは、伊勢参宮に参拝したあと、田丸にて巡礼衣装を求め、参宮街道から熊野街道へと足を踏み入れたようです。その後、西国巡礼の一番である那智大社脇にある青岸渡寺に詣でた後、熊野三山に詣でたようです。「熊野年代記」によれば、19世紀初頭には、参詣者が年間3万人を数えたといわれています。

 我々は、このような熊野古道を、単なる歴史の道として捉えるだけでなく、歩く楽しみの一環として捉えようと考えました。日頃のウォーキングで自信がつけば、環境を変えて、歴史の道に自分を置いてみることも、心身のリフレッシュになって良いでしょう。

 ここでは、熊野古道伊勢路のいくつかのルートに要する身体運動量を示します。先人が歩いた熊野古道をウォーキングする上での参考になれば幸いです。なお、コースの強弱は距離だけでは決まりません。登りや下りの割合、歩道の状態などで大きく異なります。いろいろな強度の古道があります。自分の体力に見合った道を是非歩いてみてください。

 ルートの詳しい説明や歴史的背景は、以下の文献等を参考にしてみてください。
 「熊野古道を歩く」東紀州地域活性化事業推進協議会.伊勢文化舎.
 「伊勢人No.133、139、143、156」伊勢文化舎.

熊野古道伊勢路各ウォーキングルートの距離、所要時間

 

コース名

距離
(km)

所要時間
(時間)

ルート

1

二木島峠・
逢神坂峠

約5.4

約1.40

JR二木島駅出発→二木島峠登り口→二木島峠頂上→逢神坂峠頂上→逢神坂出口→JR新鹿駅

2

始神峠

約6.0

約1.40

JR三野瀬駅出発→始神峠登り口(江戸道)→始神峠頂上→始神峠(明治道)→始神峠出口→JR三野瀬駅

3

通り峠

約6.0

約2.45

千枚田・通り峠口バス停→通り峠登り口→通り峠・展望台→丸山千枚田・展望台→千枚田・通り峠口バス停

4

一石峠・
熊谷道

約7.2

約1.45

42号線加田教会前バス停出発→一石峠→展望台→熊谷道登り口→JR三野瀬駅

5

馬越峠

約8.6

約4.00

JR相賀駅→道の駅海山→夜泣き地蔵→可涼園桃乙句碑→天狗倉山頂上→馬越公園→JR尾鷲駅

6

大吹峠・
松本峠

約9.9

約2.30

JR新鹿駅出発→波田須神社→大吹峠登り口→大吹峠頂上→大吹峠出口→松本峠登り口→松本峠頂上→松本峠出口→JR熊野市

7

ツヅラド峠

約10.5

約4.15

JR梅ヶ谷駅→ツヅラト峠入口→ツヅラト峠頂上→ツヅラト峠花広場→JR紀伊長島駅

8

八鬼山越え

約12.1

約5.45

JR大曽根浦駅→八鬼山入口手前→駕籠立場→八鬼山荒神堂→桜の森エリア→名塚一里塚→JR三木里駅

熊野古道伊勢路各ウォーキングルートの特徴

 

コース名

特 徴

1

二木島峠・
逢神坂峠

JR二木島駅を出発し、民家の裏の階段を登り狭い急な坂を登ると二木島峠・逢神坂峠の登り口。二木島峠・逢神坂峠に入ると石畳が見られ、頂上に近づくと急な登りとなるアップダウンの多い道。逢神坂峠の頂上にはベンチやスタンプ台等が設置されている。

2

始神峠

江戸道からの登りは石畳ではない山道。登りが徐々にきつくなるとともに石畳が敷かれる。石畳は10cmぐらいの大きさの石がほとんどで、石畳というより砂利道。頂上からの景色は絶景。明治道は整備された比較的広いなだらかな道。

3

通り峠

最初に少し急な登り坂が続くが、距離が短く、すぐに頂上にたどり着く。頂上からは、とてもきれいな丸山千枚田を見ることが出来る。頂上から下り、舗装された道路に出ると、丸山千枚田の中を歩くことになる。

4

一石峠・
熊谷道

熊谷道のみが世界遺産。一石峠・平方峠は非常に短くなだらか。峠をぬけると古里海岸が見え、景色を楽しめる。熊谷道は比較的狭く、石畳は敷かれていない。頂上もただ木に囲まれているだけで、景色を楽しむことは出来ない。下りはなだらかな道。

5

馬越峠

熊野古道の中でもっとも美しい石畳が残り、上りも下りも石畳が敷かれている。道幅は、紀州藩の駕籠の大きさに合わせて作られたため、約2.7mとかなり広く、実際の勾配よりも上り坂はゆるく感じる。峠の頂上からさらに天狗倉山へと足を延ばすと地獄の山という名にふさわしい急な坂が頂上まで続くが、頂上からみる尾鷲の町と海は絶景。コース周辺は、ヒノキ美林で覆われていており、気持ちの良い反面景色が単調でつまらない一面もある。

6

大吹峠・
松本峠

波田須の道はなだらかでとても短いが、とても綺麗な石畳。その後、壮大な海の景色が広がり絶景。大吹峠の登り口前にはトイレ付の休憩所。大吹峠には整った石畳と竹林があり、景色を楽しめる。松本峠は、石畳がすきまなく敷き詰められ、とても急な登り坂。頂上には鉄砲傷のある地蔵、案内板、スタンプ台が設置され、休憩することができる。

7

ツヅラド峠

JR梅ヶ谷駅からの上りには石畳がほとんどなく、その道幅もかなり狭い。峠の頂上からは、熊野灘が望め絶景。下りは、所々石畳が残っており、九十九折になっていて斜面も急。峠を下り終えてからの平坦な道は、とても長く単調である。

8

八鬼山越え

伊勢路随一の健脚コース。急勾配で階段状になった石畳が果てしなく続き、まるで空のかなたまで登って行くような道。大曽根浦駅から入る最大の難所は、曲がりくねった急坂の七曲り。頂上付近にある桜の森エリアは、太平洋のパノラマの望む絶景ポイント。下りも急な坂が果てしなく続き、足場は悪い。コース周辺の木や石などにスプレーで世界遺産反対などといった落書きが書かれており、社会的な問題も含んでいる。

熊野古道伊勢路各ウォーキングルートで必要とされる身体運動量

 

コース名

エネルギー消費量
(kcal/kg)

心拍数
(拍/分)

自覚的
運動強度

歩数(歩)

1

二木島峠・
逢神坂峠

9.9

約115-125
最大心拍数の60%-70%

楽である

約8000−8500

2

始神峠

7.1

約95-105
最大心拍数の50%-60%

楽である

約9000−9500

3

通り峠

13.6

約110-120
最大心拍数の60%-70%

楽である

約10000−105000

4

一石峠・
熊谷道

9.7

約110-120
最大心拍数の60%-70%

楽である

約9500−10000

5

馬越峠

20.8

約100-110
最大心拍数の50%-60%

楽である〜ややきつい

約14500−15000

6

大吹峠・
松本峠

-

約115-125
最大心拍数の60%-70%

楽である

約13500−14000

7

ツヅラド峠

16.7

約90-100
最大心拍数の45%-55%

楽である〜ややきつい

約17000−17500

8

八鬼山越え

32.0

約125-135
最大心拍数の65%-75%

ややきつい

約21000−21500

(注1) エネルギー消費量は、体重1kgあたりの値。例えば、八鬼山越えは、体重が60kgの人であれば、約1920kcalの消費となります。
(注2) 日本人の1日あたりの平均歩数は約7000歩、消費エネルギーは約2300kcalといわれています(あくまでも平均値)。
 
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